今日も、ここまでの道程を一筆書きで書いてみる。
※ ※ ※
さて、今は、イギリス北部、湖水地方のアップルビーという町にいる。
というより、「村」と言った方がしっくりくる感じのところで、陳腐な言い方だけど、まるでおとぎ話の世界のよう。
フェスティバルの規模は、200人ぐらいだろうか?
そんなに大きくない。
しかし会場もそんなに大きくない、学校を使っているのでちょうどいい。
もうちょっと大きいものになると思っていたけどね。
僕がここへ来ることを決めたのは、伝説のジャグラー、「クリス・クレモ」も来る、と聞いていたからである。
何しろジャグリングを始めた頃から定期的に彼のジャグリングビデオは見ていて、馴染みがあるものだから、実際に会うのがとても楽しみだった。
さて、初日のイベントは、オープンステージ。
始まる前、参加者は、狭いロビーで待機していた。
僕も、ジャグリングをしながら待っていた。
一つ、ボールが、ヨレヨレのコートを着たおじいさんの元に転がって行った。
その人はそれを拾ってくれて、うむ、と頷いて、また黙って待っていた。
会場が開くと、一緒に待っていたアルットゥと一緒に中に入る。
するとそのおじいさんもするっと一緒に入ってきて、隣でみることになった。
隣に座ると、彼は愛想よくこっちを見て眉をくいっとあげた。
どうも見たことのある顔だなぁ、とその時点でも思っていた。
オープンステージは全部で2時間だったが、途中休憩があった。
その時、やはり先ほどの愛想のいいおじいさんが隣に来た。
思い切って尋ねてみる。
「あの、もしかしてクレモさんですか?」
「そうだよ、なー、クリスでいいよ」
そう、そのヨレヨレの服を着たおじいさんが、僕が憧れていたクリス・クレモだったのです。
その後も彼と一緒にオープンステージを見て、途中で話をしたりもした。
「日本に行ったこともあるよ。1971年と、1989年。最後は1989年だった。」
1989年でさえも、僕が生まれる2年前の話。
一番気になることを聞いてみた。
「まだパフォーマンスの仕事、してるんですか?」
「うん、してるよ。去年も、ヨーロッパ中を回った」
脱帽である。
二日目、ワークショップがあったので行った。
今日も、下はスポーツジャージ、上はヨレヨレのジャケットを着ている。
街中で目の前にいても、クリス・クレモだとは絶対気づかないだろう。
部屋に入ると、彼は「おはようございマース」と日本語で言った。
「ゲンキデスカ?」と聞いてきたので、
「元気ですよ、あなたは?」
と聞くと、ハハハァ、と笑って、肩を抱いてきた。
クリスは、僕が思っていたような「クリス・クレモ」ではなかったが、「クリス」のことがとても好きになった。
技に失敗して、「あー、もうだめだ」とか言ってシガーボックスを全部捨てるクリス
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