2018年3月23日金曜日

第23回 ひさしさん

 渡邉尚(ひさし)さんは、今ヨーロッパで活躍しているジャグラーです。



 http://atamatokuchi.com/
 
 彼とは2015年から交流があります。
 出会ったきっかけは、彼の東京公演の手伝いをしたこと。
 以来妙に縁があって、旅先でもよく一緒になります。
 僕が京都に行ったり、反対にひさしさんが横浜に来たり、シンガポールでも、台湾でも、会っています。ミャンマーを共に旅行したり、沖縄の家に居候して一緒に海に入ったり、つい先週は、ベルギーでも同じホテルに泊まっていました。
 振り返ると、その邂逅の多さには驚きます。ほんとうに。

 そんなひさしさんと、数日前にスカイプで電話をしました。
 彼とはいつもジャグリングの話をします。(お互い笑いの感覚が合うので、くだらない話をしている時も多いけど)「ジャグリングを一生続けたい」とか、「視野をあたう限り広く保つこと」など、結構ディープというか、ジャグリングが、生きること全体まで敷衍した感じの話題に及びます。

 話すたび、ひさしさんはアーティストとして、常日頃考えを深めているんだな、と感心してしまいます。
 もともと自分自身で身体をいろいろ研究したり、(このへんは非常に面白いエピソードがてんこ盛りです)駅前でブレイクダンスをやっている時期があったり、芸大ではテキスタイルをやったり、コンテンポラリーダンスみたいな世界にも入って、最終的には、今ジャグリング、サーカスの世界で注目を浴びている。
 僕なんかよりずっと、芸術の世界を奥深くまで見て来た人なので、僕がいかにまだまだものを知らないか、ということにいつも気付かされます。

 数日前にスカイプで連絡をとって、ヨーロッパに計2年半ほど滞在したあいだに見聞きしてきたこと、得た感覚を話してくれました。
 それらの話がとても面白かったので、今度まとめてどこかで発表しようかと思っています。
 
ベルギー、フレッシュサーカスにて。左から頭と口の制作ぎぼさん、ひさしさん、筆者。

2018年3月22日木曜日

第22回 まだベルギーのこと、メキシコの人たち

 テーブルで渡邉尚さんと話していたら、急に数人のグループがこちらにきて、「あなたたちはどこからきたの?」と聞かれました。訳が分からず、とりあえず、日本人、と答えると、手を引いてバーの方へ連れていかれ、タダでビールを飲めることになりました。
 どうやら、借り物競走みたいなゲームをやっていたみたいです。
ビールを受け取ってから、写真を撮れる機械を見つけて、一緒に写真を撮ることになりました。

 どうも彼らはダンスに関係のあるところから来た、というようなことを言っていました。(いろいろまくしたてられたので、記憶があやふやなので違ったかもしれない)
 そういえば他にも、フレッシュサーカスには、演劇の人たちも来ていました。パーティで話しかけられた。そのフランスから来たという女性は、村上春樹が好きだ、というので村上春樹の話をしました。いろんな業界の人たちが来ていた。

2018年3月21日水曜日

第21回 閑話休題・ベルギーのフリット



   ベルギーの名物、フリットです。先週食べてきました。ただのポテトフライです。ソースがいろいろあって、選べます。僕はこの「スペシャール」が好き。マヨネーズ、ケチャップ、玉ねぎがかかっています。本当は、玉ねぎがただ刻んだだけの、なまの方が好きなんですが、煎ってあったのも悪くなかった。
    昨年の夏に、ジャグラーの友達、ドイツ人のティム君の家に行った時、「これはドイツにはないんだ」といって、わざわざオランダのマーストリヒトに行って食べさせてくれたのを思いだします。

2018年3月20日火曜日

第20回 INCAMの仲間たち


 ブリュッセルで初めて出会った、INCAMの人たちです。
 「サーカスの雑誌なんかを作っているちょっとおかしい人々」と自分たちを呼びます。
 光栄です。

第19回 ベルギーで考えたことエクストラ ルネ・マグリットの素描が好き


 僕はこの、ルネ・マグリットのクロッキー画が好きです。昨日までいたブリュッセルで、これだけを見たいがゆえに、美術館に入りました。一体何がそんなに好きなのだろう、と思います。でもとにかくこの絵を見ると、マグリットさんって面白そうな人だよな、と思います。なんとなく、前世紀を生きたマグリットさんと会話をしたような気分になります。

 今回ベルギーでいくつかのサーカス作品を見ましたが、いいなと思った作品は「そのアーティストが言いたいことがわかったもの」でした。その上で「言いたいこと」について、「なるほどね」とにっこり頷いてしまうようなものでした。
 メッセージ性って、そういうことかな、と思います。

2018年3月18日日曜日

第18回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 7日目 フレッシュサーカスについておもうこと

 起きて窓の外を見ると、遠く広がる平原に、雪がうっすらと積もっていました。柵の向こう側では、小豆色の服を着たポニーが2頭、だらしなく佇んでいます。雪が降って落ち込んでるみたいでした。昨日の夜ビールを飲みながら、確かにブラムは「明日は寒くなるみたいだよ」と優しい声で言っていましたが、ここまで寒くなるとは思わなかった。雪だねぇ、とか言いながらブラムの部屋に行くと、一足先に起きた彼は、タトゥーのデザインを濃いペンで紙に描いていました。



 シャワーを浴び、親切で上品なお母さんに挨拶をして、パンとコーヒーをいただきました。手作りのお菓子もありました。二人はオランダ語で話しています。次の目的地で僕を待ってくれているアシュテル君に連絡を取り、鉄道のチケットをギリギリで印刷して、スーツケースを持って外に出ました。ブラムの真っ赤な車にも雪が積もっていました。
 無人のロンデルゼール駅まで車で送ってもらい、ブラムとはお別れ。また、今年のEJCで。凍えそうな寒さの中、文庫本を読みながら、電車を数分、待ちました。
 ブリュッセルの町を歩いている時にも思ったんですが、こういう時、一人で旅をするのは寂しいもんだよな、と感じます。SNSで人と繋がることについても考える。なにかを「シェア」することは救いなんだと思います。嬉しいこともシェアしたいし、寒いね、とかもシェアしたいものです。「幸せは2倍、苦痛は半分」みたいなことですね。それでも、僕はひとりで内省的になったりするのも嫌いではないので、なるべくひとりの時間はひとりでいるようにしています。そしてこういう時間に得た気づきは大切にしたほうがいい、と思っています。特に旅先では、日本で普通に暮らしていると気がつかないようなことに出会ったり、思い至らないようなことに思い至ったり、大事だと思っていなかったことを大事に思うようになったりするので、そういうのは、ひとり旅の醍醐味でもあります。

 電車の中ではポストカードを書きました。ブラムが持たせてくれた手作りパウンドケーキを頬張ります。車窓からは寒そうな景色がずっと見えています。ロンデルゼールから目的地のゲント・ダムポートまでは、途中の中心駅で乗り換えて、一時間ぐらいでした。

 駅から歩いてアシュテルの家を目指します。ゲントは静かな町で、観光の季節ではないからでしょうが、人の数も少なかったです。家までは地図を見ながらなんとか周辺までたどり着き、スーツケースを引いてウロウロ(ガラガラ)していたら、アシュテルが後ろから声をかけてきました。さっき起きたところで、窓の外を眺めていたら、僕が歩いていたんだそうです。アシュテルはニュージーランドで2年前に旅行をした時に出会ったジャグラーです。そんなにちゃんと話した記憶もないんですが、僕がベルギーに行くことをフェイスブックで知って、ゲントにいるからおいでよ、と言ってくれたのです。



 コーヒーとポテトチップスを食べてから家を出ました。町は教会やお城など、歴史的な建物であふれていました。17,18世紀に建てられたものが多いんだよ、とアシュテルは言っていました。日本だったら江戸時代前半ですね。本屋に行ったり、古着屋に行ったり、トマトのスープを食べたり、アシュテルの友達の女の子が働いているチョコレート屋さんに行ってコーヒーとチョコをもらったり、「ゲントで一番美味しいフライドポテト屋さん」に行ったりして、家に帰って、音楽を聴きながらゆっくりして、空港まで車で送ってもらいました。彼女が今日コロンビアから帰ってくるというので、ちょうど迎えにくるところだったそうです。妙な偶然もあるものです。その彼女が到着する時間ぐらいに、ちょうど僕も空港に着きたいと思っていたのでした。

  空港について、送るものを送ったりお土産を買ったり、昨日の投稿を書いたりしていたら、あっという間に搭乗の時間になりました。そんなわけで今はインド上空です。

 これでフレッシュサーカスは完全に終わりました。終わってすぐの実直な感想を少し書いてみます。
 
 驚いたのは、会の規模です。ベルギーの、特にフランス語圏であるワロン地方や、フランスを中心として、ヨーロッパ中からディレクターやサーカス施設の人、アーティストたちが山のように集まりました。3日間を通して同じ建物の中で行動するので、自然と交流が生まれ、その中から新しいビジネスも生まれていきます。
    会場は、テアトル・ナシオナル、つまり、国立劇場でした。会議に使えるスペースがいくつもあります。何百人規模で収容できるシアターもいくつか入っています。本格的なカフェテリア、バーもありました。

    ブリュッセルは、「ヨーロッパにおけるサーカス」の中で重要な位置を占める都市の一つには違いない、と思いました。
 デフラクトというカンパニーのエリック・ロンジュケルに聞いてみると、「ブリュッセルはサーカスアーティストにとって最高の町だよ」と言っていました。理由を聞いてみると、まず、サーカス施設のエスパス・カタストロフは、練習やリハーサルをするスペースを安く、簡単に提供してくれる。そして、サーカス学校、esacもある。さらに、劇場が町に点在しており、中にはたとえばカルチャーセンター・ジャック・フランクのように、サーカスを頻繁に上演する劇場もある。なのでアーティストがよく集まってくる。また地の利もあって、パリやベルリン、アムステルダム、北欧諸都市など主要な街にアクセスしやすく、空港も町から15分ほどと近い。とことん便利なのだそうです。物価も家賃も、比較的安い。街で見かける人種も様々です。南米から来たアーティストは、「私が受け入れられて、サーカスアーティスト代表として登壇しているということが、何よりブリュッセルの多様性への寛容を示していると思う」と言っていました。
 
    フレッシュサーカス自体は、パネルディスカッション、スピーチの連続で、それほど心躍る話題が次々に飛び出すわけではなかったです。僕にとっては、他の国でサーカスの雑誌を作る人に会えたこと、今まで会ったことのない人に会えたこと、そして、ヨーロッパの「サーカス」という概念を取り巻く状況の一端が知れたことが、いちばんの収穫でした。
    エスパス・カタストロフのカトリン・マジスさんなんかは、特に、会えて良かったな、と思います。いつでも僕の顔を見るたびハスキーな声で「サヴァビアン?(どう、いい感じ?)」と肩に手を置いて聞いてくれて、とても感じが良かったです。毎回ショーの前にひょこひょこと現れて口上を述べたり、登壇しても、ひとりでふざけて楽しげに話していて可愛らしい人でした。あまりに話すので、最終日にはもう声が枯れていました。

真ん中がカトリンさん


   フレッシュサーカスと同時開催だったフェスティバル・アップ!は、日々違うショーが見られる、ブリュッセルでもおそらくいちばん大きいサーカスフェスティバルでした。
    ラインナップは、サーカス学校の卒業生ら、キャリアの浅い人たちをなるべく入れて、チャンスを与えていたようです。中には、もう少し内容を検討したほうがいいんじゃないか、これほどの装置を使っていながら、いまひとつフルに活かせていないのではないか、と思える作品もあって、決して傑作だらけというわけではなかったです。しかし、何はともあれ金銭面、施設面で、サポートは日本よりずっと充実しているのだ、ということが分かりました。大規模な機器を使ったサーカスにチャレンジしたい人にとっては、とてもいい環境だと思います。学校(esac)見学にも行ったのですが、出来上がったのが5ヶ月前だ、という新校舎で、清潔で静かで、集中して創作をするには願ってもない環境だろうと思いました。とても、ワクワクする空間でした。なにより僕自身、こんなところに身を置いて、毎日練習ができたらとても幸せだろうな、と羨ましくなりました。

    日本ではこれほど充実した環境はちょっとないです。もちろん環境が整っていれば優れた作品ができる、という保証はないですし、金銭、施設に余裕がないハングリーな状況だからこそひねり出せる工夫、考えかた、がむしろ大事になってくるかも知れない、という気はしました。ですが、とにかく、ヨーロッパの学校というのはどういうことをしているのか、一度は見に来る価値のあるものだと思います。比較にならないくらい、恵まれているんだな、というのが分かります。

第17回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 6日目 おわかれのあと

 ホテルを離れて、インターネット環境が不安定だったので、二日分まとめて公開しようと思ったのですが、今ブリュッセルの空港で、もうボーディングが始まってしまったので、とりあえず、昨日の分。「今日(2018/03/17)」の出来事は、また経由地のドバイで公開できたらと思います。
 
 朝、ホテルをチェックアウト。INCAMの残ったメンバーで朝ごはんを食べながら会議をします。みんな疲れた顔をしてますが、(まぁそれでも、この後に会議はないのでわりにリラックスした表情だった)アドルフォさんは最後まで元気。ビセンテさんが発言するたびに「ビセ〜ンテ」と言っておちょくっていました。あとはみんな、バイキングなので、ナッツやジュースを取ってきて袋に詰めていた。「次はINCAMが出禁になっちゃうね」と笑いながら話す。アドルフォは誰にも増してどんどんいろんなものを袋に入れて、呆れられていた。「次はバンに乗ってここにきて、部屋を持って帰ろう」とか言っていた。
別れ際にジャグリングを見せてくれたビセンテさん

 「サーカスのネットワーク」について話していてわかったことがあります。
 それは、僕は「サーカスのネットワーク」の中では例外的な立場だということです。そもそも日本から来ていることもあるかもしれないけれど。サーカス、というより僕の興味の中心は「ジャグリング」です。そして、「ジャグリング」というのは、サーカスの中ではそれほど中心的な概念ではなくて、(当たり前ですが)「サーカス」と言われて名指されているのは、どちらかというと、アクロバットとか、そういうものの方が中心的な気がしました。「身体性」に重点がある。ものを操るとか、そういうことは中心ではない。 
 考えてみれば、ジャグリングがサーカスの中心ではないのは当たり前です。ですが、僕は今まで9割ぐらい、日本でも西欧でもアジアでも、ジャグリングの作品ばかりを見てきました。それゆえに持っていた僕自身の中の「サーカス」に対する偏った見方みたいなものも、あったみたいです。反省。
 それと単純に、僕以外のみんなはもっとプロフェッショナルなレベルでやっていて、オーディエンスのことを考えている感じがしました。
 僕は割と好きにやっている感じです。しかしそういう立場の僕がへろっとした発言をすることで場が和む、みたいな場合も時々あったけれども。「日本からきてくれたのはよかった。立場の違う人も巻き込んでいきたい」とも言ってもらえたので、よかったかな、とは思っています。
 結果的に自分の立場についても、「個人的なことは、あくまで個人的にやっていこう」みたいに思えたので、よかった。
 西欧の「サーカス」は、はっきりと、「サーカス」という立場があるのでした。
 「ダンス」みたいな感じで。

 さて、ホテルを出て、足早に本屋へと向かいました。外国にいくと、時間があれば本屋に寄るようにしています。別に何を買うでもないんですが、本を見るのが好きです。(とはいえだいたい何か買ってしまいます)世界で一番美しいと(誰が言っているのか知らないが)言われているらしい、トロピズムという本屋にも行く。
 
その本屋があるアーケード

 そして、以前も来たことのあるマグリット美術館に行く。
 もっと他にも見るところはあったんですが、やはりマグリット美術館に行くことにしました。どうしてもまた生で見たかった『光の帝国』という作品と、彼の落書きを見てほんの30分ぐらいで出てきましたが、幸せな時間でした。もうこれでブリュッセルに名残はないな、と思った。
 
 そして、再びショーをみる。 『Strach』と『Titre Définitif』。
 『Strach』はアクロバットを使った劇。「恐怖」という意味のようで、文字通り、狼の格好をしてワウワウ吠えたり、アーティストが倒れそうになるのを観客が助けたり、観客が肩の上に乗せられたり、スリル満点でした。『Titre Définitif』は、事前に観客が書いた歌のタイトルを当てる、というマインドリーディングショウ。マジックも織り交ぜつつ、合間にギターやドラムを演奏して、ジョークで楽しませながら進めるものでした。惜しむらくはフランス語がほぼわからないので、何が起こっているのか全然わからなかったということです。スタンディングオベーションが起きていたので、きっとすごく面白かったんだと思う。

 終わると、友人のブラムがほいほいと迎えにきてくれました。
 ホテルをチェックアウトするのがこの日だということをすっかり忘れていたので、ロンデルゼールという町にある彼の家に急遽泊まらせてもらった。
 ベッドタウンの、静かな町で、家もとても綺麗でした。
 ブラムはタトゥーアーティストで、アジアに関心を持っているので、部屋にはエキゾチックな装飾や、日本の漫画(手塚治虫の『ブッダ』もある)がたくさんありました。
 いつも行き当たりばったりに旅をしていて感じるんですが、こうやって助けてくれる友達がいるというのは、実に、幸せなことだと思う。外国にいる友達と話しながら食べるご飯というのは、てとても美味しいものです。この夜は、ケバブを食べました。美味しかったのは、肉とポテトがいっぱい入っていたからだけじゃないと思う。