2018年3月16日金曜日

第16回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 5日目 

 朝遅め。さすがに疲労が溜まってきました。

会場に行って、ふたたび、「サーカス」という言葉についてのセッション。
 サーカスをショーとして売っていくにあたって、「サーカス」という言葉が持っている既成のイメージが邪魔をしている、ということがある、という話。
 ショーごとのそれぞれの違いを端的に説明するのにはどうしたらいいのか、という話も。ビデオの方が、写真や言葉だと伝わらないことがたくさん伝わり、全体像が見えるからいい。でも同時に、イメージは一つではない、その多様性がサーカスでもあるので、難しい。
 実際にいいショーをたくさん見てもらおうのが一番いいのではないか、と。



 僕自身は、あんまり「サーカスを広めよう」みたいに考えたことがなかったので、いまいちこれに関しては意見を持てませんでした。しかし、色々とショーを見ていく中で、そうか、これが西欧での「サーカス」なんだな、という総体みたいなものも少し見えてきて、問題がどこにあるのかはなんとなくわかった気がしました。

 終わると、クロージングの会をやって、フェアウェル・ドリンク。帰ってしまう人もいるので、熱いハグを交わしたりします。ビズ(ほっぺたにキス)もします。

急なインタビューに応じてくれたエリック・ロンジュケルさん

 ビズって、思うんですが、本当に、毎回タイミングと具体的なやり方に困ってしまいます。
 いきなり初対面の女性に、両方のほっぺにキスをされたりするので、受け取るこっちはパッと反応できなかったりします。あと、普通に握手をするときも、握手なのか、ギャングスター的な軽い挨拶をするのか、いまいちわからないときもある。

 それはさておき。

 バスに乗って、エスパス・カタストロフと、ESAC見学。
 エスパス・カタストロフは、サーカスアーティストが必要なときに、簡単な手続きでスペースを借りられるところ。エリックも「ここは最高だ」と言っていて、正式な学校ではないですが、練習やリハーサルも十分にでき、ワークショップがあったりもするみたいです。これから2カ年計画で、建物をまるきり新しくする計画で、今回は、それが具体的にどんな風になるのか、ということを聞きました。


この廃墟も潰す、というのだが、これはこれで味があるような。


 中までは、見られなかった。ちらっと見えた部分は、地区センターのダンスルームのような感じのスペースでした。
 ESACは、ベルギーでも有数のサーカス学校で、つい5ヶ月前に建物が新しくなったばかり。元々は、周辺の建物を温める空気を、炭を燃やして生産するところ(というのが、いまいち現代の僕たちには想像がつかないのですが)だそう。要するに、空調システムの一部ですね。
 





玄関を入ってすぐ、天井の高い部屋に、トラピーズやマットなどがおいてあり、その隣の部屋はさらに高さがあって、(40mくらいある)そこにはより本格的に、上から道具が吊るせる施設がありました。その後探検は続き、やや小さい、鏡張りのダンススタジオや、音楽が演奏できる部屋、リラックスする部屋、シャワーなど、くまなく見ました。こういうところで生まれるサーカスアーツは、日本のそれとはまったく違うものになるだろうなぁ、という気がしました。でもだからこそ、日本で、もっと地味な生活感に基づいたインスピレーションとか、場所がなくてもできることとか、仲間がいないからこそ発展することとか、そういうものを見つけるのがいいのかもしれないな、とも思いました。体なんか鍛えなくていいし、空も飛ばなくていいような「サーカス」を探してもいいかもしれない。
 それはもはやサーカスとは呼ばれないのかもしれないけれど。

 その後、
 『Burning』『Spiegel im Spiegel』を見て、劇場に戻って一杯だけ(コーラを)飲んで、帰宅。

第15回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 4日目 

 朝、フランスのカンパニーのプロダクションの方と待ち合わせをして、少し話をしてから出発。
 フレッシュサーカスはサーカスの制作、メディア関係の人たちが一堂に会する場所なので、よいビジネスの機会だ、ともとらえられているようです。
 まずは朝のセッション。 アーティストの具体的な自分史みたいなものを聞きました。日本からジャグラー、渡邉尚さんもスピーカーとして参加。カナダで勉強したアーティストや、アフリカ、エチオピアのサーカスの現状も。




 アフリカには、サーカスアーティストはたくさんいるのに、学校や、テントなどの必要な施設がない、ということでした。また、「アフリカのサーカス」というものにお客さんが求めるもの(平たくいうと、「エキゾチックさ」を求めている)と、アーティストがやりたいことの間にも差がある、というのもあるみたいです。アーティストはもっと先進的(と言っていいのかわからないけど)をやりたいよう。
 映像で見た限りでは「アフリカっぽさ」みたいなものがいいなあ、と思ったのですが、要するに演じる方はそれが嫌っていうことなんですよね。難しいものです。
 あとは、アーティストが、お金が稼げるようになった時点で現状に満足してしまいがちなのだ、ということも言っていました。
 ところで、登壇者にも参加者にも、渡邉さんが一人でスタイルを作り上げてきたことに対して驚きのコメントをする人が多かったです。彼が登壇したわけでもないセッションやフェスティバル関係者との会話でも、割合「ヒサシが…」みたいな話を聞きました。
 全然、ひいき目ではなくて、やはり渡邉さんは、どんな国に行っても固有の驚きを与える存在なんだ、というのが垣間見えました。 

 昼食を挟んで、次のセッションへ。

空き時間にグランプラスに行った。

 今度はサーカスアーツメディアをまとめるINCAMメンバーと一緒に、「サーカス」という言葉がもつイメージと、それを見にくる人たち、というテーマで話をしました。
 ユーロセントリック(欧州中心主義的)な感じが僕には何か引っかかっていたので、それをとりあえず提起してみました。 まず第一に、アジアにもサーカスはある、ということ、一方で「アジアでは『まだ』サーカスが普及していない」みたいな考え方はちょっと違うんじゃないか、ということ。
シンガポール/台湾で撮られた写真を前にして少しだけ話しました

 日本にもサーカスはあるの?
 と今回の滞在を通してよく聞かれたんですが、「サーカス」という言葉で「くくりうるもの」はあるけれど、「はい、あります」と答えるのも何か変な感じがします。もちろん、木下大サーカスとかあるのは知っていますし、見たこともあるし、それについて「サーカスと名のつく集団」はたくさんいるとは言えるんですが、このフレッシュ・サーカスで語られるサーカスという枠の中ではまた話が違ってくる。
 個々に見れば、ジャグラーやアクロバットや、要するに「サーカス」と呼べる分野で能力を発揮している人たちはいるのですが、それをヨーロッパ (というか、フランスや、ベルギー、ドイツなどの、「西欧」なんですよね、多分)で語られるような、商業性を持った「サーカス」の括りに入れてしまうと、なにか正しくない気がする。
 もちろんそういう事情もみんな分かってくれて、ユーロセントリック、ということがセッション全体の話題にものぼったので、面白かったです。どれほど影響があったかはわからないですが。
  その後は、少し時間があり、お酒を飲みながら次のショーまで待機。 こういう時間で、人と情報を交換しあったり、新しい人に会ったりしていました。ビジネスとして、こういう時間に重要な意味があるんだな、ということが伝わってきました。

お酒を片手にサーカスの話をする

この日見たのは 『Persona』『Mémoire(s)』の二本。

  『Persona』は、4人の女性が、それぞれの国の言葉で(イタリア語、スペイン語、英語など)で好き勝手に喋りながら、アクロバットや、チャイニーズポールなどサーカス芸を繰り広げる、シュールレアリスティックなもの。(今回見た演技の中でシュールレアリスティックな側面を持たない演技って、なかったですが)


『Mémoire(s)』は、複数人が、「記憶」をテーマに、様々なシーン設定をして、はちゃめちゃな劇のようなことをする。
最後に、みんなが下着姿で高いところに登り、白い粉をお互いに官能的に塗りあって、アクロバットをするんですが、それが面白かった。



終わると時間は11時。 すぐ寝ました。



2018年3月14日水曜日

第14回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 3日目 懐かしい顔とヨーロッパのサーカス

 ベルギー、3日目です。朝から予定がたくさんありました。色々しにベルギーにはるばるきたわけなので、よかったです。
 朝ごはんを食べていると、ガンディーニジャグリングの創始者、ショーン・ガンディーニさんに会いました。昼ごはんでも一緒になり、「隣に座っちゃっていいかな」とこっちまできてくれました。いつでも嬉しそうに話す方で、一緒にいるとこっちが元気になってきます。以前にインタビューをしたことも覚えてくれていて、嬉しかった。


 いよいよフレッシュ・サーカスが始まります。(そう、公式に始まったのは今日からなんですね)オープニングとして、カンパニーによる複数人のハンドトゥハンドの演技の後、色々とサーカスの問題について話していました。












 終わった後は、ショーを見ました。
『MA』
『INNOCNENCE』
の二本。どちらも二人組のショーで、『MA』は男二人で、チャイニーズポールとシンプルなクラブと、木刀と、サーベルを使った(おそらく)インプロをベースにしたショー。『INNOCENCE』は、男女のショーで、ハンドトゥハンドもあり、ジャグリング的な要素もある、演劇的な作品でした。詳しくはあとで書きます。
 二本ともよかったですが、INNOCENCEが、とくに終盤で鳥肌が経ちました。
 内容についても色々考えたのですが、体力が限界なので、また改めて、とったノートを元にここなりどこかで発表します。

2018年3月13日火曜日

第13回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 2日目 2/2 INCAMミーティング、UP!フェスティバルオープニング

 BOZAR(ボザール)という美術館に行き、オープニングのプレスカンファレンスに出席。なんだか重要そうな人たちがたくさん。ブリュッセル市は、focusCIRCUSと銘打って、ヨーロッパにおけるコンテンポラリーパフォーミングアーツの中心として市を推していくのが今年の方針らしい。それが、これから2019年の3月まで続く。
 主導はワロン=ブリュッセル共同体(フランス語圏の共同体)。ベルギーが国として、というのとは少し違うところに、国家の言語的分裂事情が垣間見える。
 事前にメールで話していたカトリン・マジスさんとここで会う。彼女は、サーカスパフォーマーのための施設「エスパス・カタストロフ」の人。すごく活発、ひょうきんだ。とても面白い。「フランス語で話すけど、あなた、フランス語わかる?」と言って、手をひらひらさせる。だが実際ほとんどの登壇者、フランス語で喋る。大筋はわかるんだけど、こんなにもフランス語がきちんとわかったら実際、便利だろうな、と思ったことはなかった。少なくとも「サーカス」の文化圏では力を握る言語だ。
 
この計画で鍵を握る人たち

カトリンさん

色々もらう。ブリュッセルを紹介する分厚い本も入っていた。
ブリュッセルの観光局もスポンサーで、宣伝に余念がない。面白い。

BOZAR 外観

会場は、BOZAR外の「半分テント」。何人かは「全然プラクティカルじゃない」など厳しい意見(笑)
僕は結構良いな、とか思ったんですが。
 
 そのあと豪華な昼食をヨーロッパ流にゆっくりと食べ、(肉がとんでもなくでかかった)次の目的地へ向かい、サーカスを扱うメディアを集めた、INCAMのメンバーで話し合い。




例の、キム・キャンベルさん


 小ぎれいなオフィスで、肩の力を抜いてみんなで、雑誌を続ける上での困難や、各々の仕事の紹介、今後どのように連携していくか、などを話す。それぞれが少しずつ違った理由で、違った背景を持って、雑誌やウェブメディアに関わっていた。
 僕のようにごく個人的なモチベーションでやっているのは、他にメキシコのドクシルコを立ち上げたロドリゴさんがいて、(もちろん細かく見ればみんな個人的な理由で始めてるんだけど)年代も近く、彼もまたパフォーマーなので親近感が湧いた。
長い棒でバランスをとり、その上を人が登る「パーチバランス」のパフォーマー・ロドリゴさん

 その後まだBOZARに戻り、今度はUP! フェスティバルのオープニングショー。
短いものをさらっとやって終わるのかと思いきや、しっかりとしたホールで、燕尾服をきたクラウン的なMCまでついた本格的なショーケースだった。演技も4、5個見た。参加者も非常に多い。










 お酒もご飯もバンバン振舞われる。INCAMの人と話したり、他に知っている人はいるかどうか、スパークリングワイン片手に会場内を歩き回っていたら、案の定、デフラクトのギヨームや、エリック、ショーン(ガンディーニ)、リドのミゲルなど、知り合いにたくさん会う。ギヨーム、相変わらず熱心に日本語を勉強していて、「お元気ですか?また、会えて、嬉しいです!」とニコニコ言ってくれる。

 今日1日で色々と起こった。もう今は夜の12時40分。少し頭が混乱している。中身の詰まった日だった。
 ちょっと立ち止まって考えたいこともいくつかあった。
 とくに感じたのは、「ヨーロッパと日本ではサーカスを取り巻く状況は根本から違う。その全体像は、出来上がる作品だけ観ていてもどうも理解ができなくて、こういう風に、『サーカス』という言葉で支えられた共同体や、経済的基盤など、そして観衆の方の受け入れ方、態度など、全てがあって、『サーカス・インダストリー』を形作っているのだな」という呆れに近い驚嘆だった。

 今まで僕自身、EJCと友達のジャグラーを主に「ヨーロッパのジャグリング」を知る手がかりとして用いて、考え、人に伝えていましたが、「ヨーロッパのジャグリング/サーカス」という像を語るには、もっと色々と手を伸ばして、むしろ「EJCはヨーロッパにおいても特殊なのだ」というところを、しっかり噛み砕かないといけないな、という感じがしました。
 ともあれ、INCAMのメンバーと仲良くなれたのは大きな前進だと思うし、今までとは少し違う方向に人の繋がりができたような気がするし、朝食に出たチーズは笑っちゃうぐらい美味しかったし、今のところ、いい感じです。

2018年3月12日月曜日

第12回 ベルギー・フレッシュサーカスの旅 2日目 1/2 サーカスマガジンの人たち

 ブリュッセル初の朝。6時に目が覚めたので、身支度をして、朝ごはんを食べに行って(ヨーロッパに来ると、大部屋の安宿しか泊まらない僕にとってはとても豪華だった)少し散歩をする。広場を歩いていたら、向こうから歩いて来る兄さんに笑顔で「シエシエ」攻撃を受ける。レベル低いなぁ、と思いながらにっこり笑って「シエシエー」と返す。
 裏路地のようなところに入ると少し気味が悪かった。もうすでに明るい時間ではあったが。
 
 ホテルに戻って、朝ごはんの会場を見渡していたら、後ろから声をかけられた。
 「PONTEの人よね、こっちにいらっしゃい」
 イギリスでサーカスマガジンをやっているケイトさんだった。 
 カバンにPONTEのバッジをつけていたら、それを見つけられたのだった。よくわかったなあ。
 中に入ると、今回招いてくれたアドルフォがミントティーを淹れていた。
 「元気か〜〜!!」といつもながらに元気に声をかけて来る。彼よりも僕の方が元気だった試しがない。
 その後、チェコのヴェロニカさん、フィンランドのエヴィアンナさん、メキシコのロドリゴさんにあう。

 みんなサーカス関係の雑誌などを運営する人だ。
 アドルフォは「INCAMは、こういうサーカスの雑誌、みたいな狭い分野で活躍する人が、寂しくないように作ったんだよ」と、パンを頬張りながら言った。

 朝ごはんの席ですでに、紙雑誌とウェブ雑誌の違い、どんなことを発信して行くのか、出張の多い仕事で、どうやって自分の時間(ホリデー)を確保するのか、など面白い話題がいっぱい。
 どの人もすごくフランクで、中には僕と似て、パフォーマンスをしながら雑誌をやる人もいて、楽しみになってきた。
「コンテンポラリーシアター、みたいな分野の堅苦しいアカデミックな人達と違ってサーカスのコミュニティは気楽でいいわね」とヴェロニカさんは言っていた。







朝の散歩。フェスティバルのポスターも見つけた。